フルーツタルト2

「うお……」 中から姿を現したのは、おいしそうな色とりどりのフルーツを乗せたタルト。 「どうしたの…コレ」 「んー?ここチーズやら卵やら使わしてもらって、ちょっと、な」 「アンタの手作りかよ…」 恐るべし、アスマの器用さ、アンド愛情。 「…忘れてる?」 キラキラ輝く目でタルトを見つめる彼に、一応アスマは聞いてみることにした。 答えは・・はなからわかっている。 「…何を?」 「だから…」 やっぱり、シカマルは忘れているようだ。 今までの彼女らもこんな空しかったのだろうか。 今更ながら申し訳ない気分になる。 きっと彼女らもアスマに対してこう思っていたに違いない。 (この鈍感野郎がっ!!) 「ま、いいわ。食おうぜ」 自分とシカマルの皿にそれぞれ切り分けたタルトを乗せる。 まってました、と言わんばかりに目の前に運ばれるとすぐにフォークを入れ、口に運んだ。 「……うめぇ!!」 甘いものはあまり好きではないシカマルが叫ぶほど、美味しかった。人工的なべったりした甘さでなく、 自然な甘みだけというのだろうか。土台のタルトの甘みとフルーツの酸味がよくあっていた。 珍しくぱくぱくと食らいつくシカマルを見ながらアスマは煙草に火をつけた。 大事なことは忘れているが 旨い旨いと機嫌よさげに食べる姿を見れただけでよかったとしようか。 「あー…」 ピタリとフォークの動きが止まる。 持ち主はタルト上のイチゴにも負けないほどに顔を赤らめて。 「・・・そーゆーことかよ・・・。」 ようやく思い出したらしい。 「なんだ?」 どうせならシカマルの口から解答が聞きたいアスマは意地悪く、聞き返した。 「今日・・・・・だろ?」 「だから、何が?」 「・・・つきあった日・・・・1年・・・・」 熟したイチゴ並みに赤くなって俯いている。これ以上意地悪するのはかわいそうだ。 「ご名答♪」 よくできました。 シカマルにしては頑張ったほうだ、2重丸、いや花丸をつけてやりたいくらいだ。 「こ・・・こんなトコでやらなくてもいだろ!」 任務に出るまではシカマルも覚えていたのだ。 どうせアスマのことだから忘れているだろうと、何も期待せずにいたら 「驚いた?」 本当はものすごく驚いたし嬉しいけど、アスマの調子に乗る顔を見るのもくやしいので あえてそっけなく答えた。 「まぁまぁ、な。」 シカマルは2切れ目に手を伸ばす。タルトだけを見るように意識しても、視界には嫌でも 頬杖をついてニヤニヤしているアスマが入ってくる。 (くそ・・・腹立つな・・・。) 「シカー。」 「・・・なんだよ。」 恥ずかしくて嬉しくて泣きそうで、腹がたってもう何も喋りたくないのにタイミングよく アスマが声をかけてきた。 「幸せ?」 少なくとも旨いもの食べてる時は人は幸せだ、と答えようとしてやめた。 アスマの求める答えはきっと違うと直感で思ったからだ。 1年も毎日顔を合わせてれば、ふざけているのか真面目な質問なのかも区別がつく。 今は、後者だ。 だからこそ真面目に返さなければならない。 答えは出ているのに、変な自制心が働いて言うべきか言わないべきか、シカマルは悩んだ。 「俺は、しあわせだ。」 ゆっくりと響く声に、顔を上げてみればいつもより優しい笑顔。 涙のダムは決壊寸前だ。 もちろん幸せが引き起こす嬉しさの大洪水。 「・・・帰ったら、将棋しよーぜ」 また俯いて、口に目いっぱいタルトを頬張り、そう答えるのが精一杯だった。 あぁ、という返事を聞きながら、シカマルは手を伸ばした。 アスマが作った幸せの詰まったフルーツタルトへ。 終。
<あとがき> 1000打を記念してお祝いっぽいのを! と、気合ばっかハイって無駄に長し!! アスマさんはパティシエ並の腕ですw 粗品ですけど、お持ち帰り自由になってますー。 もし、奇特にも「持ってかえってやるぜ★」な方は 一声頂けたら管理人泣いて喜びますvv 戻る