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「あんたなんか嫌いだ」




朝飯をパンにするかご飯にするかという犬も食わぬような些細な喧嘩をした。
恋人の部屋を飛び出し、ダッシュで自宅へ向かう。
息を切らして顔を赤らめて眉を歪めて帰宅すること数えきれない。


「またか?」

玄関に入るなり、シカクに怪訝な顔で見られた。それには答えずに自分の部屋のドアを
勢いよくしめる。母親が出かけていたのが救いだった。朝帰りについてガミガミ言われること間違いなしだからだ。
頭まですっぽり布団にくるまる。



体に染み付いた匂いが嫌でも喧嘩相手を思い出させる。






(あーもー!うぜぇ!)











それが今から65時間前のこと。あれ以来アスマの顔を見ていない。
今日は久しぶりに10班メンバーでの任務。あんなに楽しみにしていた日なのに気が重くて仕方がない。
戦闘の行動パターンなら200と考えつくのに、アスマへの第一声が一つも思い付かない。
約束の時間を過ぎても現れず、ますます焦る。遅刻しているだけなのかもしれないが、何かあったのでは
ないかと大きな不安要素になる。



(あんのやろ…ばっくれたのか?)





「先生遅いわねー」





痺れを切らしたいのが言う。




「あれ…イルカ先生?」






息を切らして走ってくるのはアカデミー教師のイルカだ。





「ごめんな〜待たせて」



「アスマ先生は?」




「おとといから任務に出られててなー長引いてるみたいだ」


おとといといえばシカマルと喧嘩した後か。



「…やべー任務?」



「Sランクだ」



「…」





あんな熊でも上忍だったんだな、と改めてシカマルたちは思った。





(早く帰ってこいよ…馬鹿)











イルカとの初任務はなかなか楽しく、終始和気あいあいとしたムードのまま完了した。








唯1人、浮かない顔をしたまま…






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