カカシ先生★誕生日祝い★











いつからか憶えていない程、遥か昔から。
大切なヒトを失くした日にちばかり、
大事にするようにしていた。
忘れない為に、何もできなかった自分を戒める為に。 









だから見落としていた。
こんなに幸せな1日があるってこと。











「んじゃお疲れサン」









任務を告げる一言を口にすると、いつもなら其々に散っていくのに
三人ともその場に残っている。あのサスケまでも落ち着かない様子でソワソワしている。









「ん?どうした?」











一番顔に出やすいナルトに聞いてみる。
ソワソワどころか「今から何かやります!」と顔に書いてある。
バレバレだっての。
それでも子供心を傷つけちゃいけないと思い知らんふりをして三人を交互に見渡す。
サクラが小さな声でせーの、と合図をする。









パーン★








「?!」










煙玉からは色とりどりのリボンやら紙吹雪が弾けた。














「「カカシ先生!誕生日おめでとう♪」」 








「え…あ…」










そう言われれば今日は9月15日。









「自分の誕生日忘れてんなよ…」











そっけない口調で顔を赤らめながらサスケはズイッと俺の方へ手を差し出した。
花が握られている小さな手。













「…ありがと」











それを受け取ると、またいつものように三人は、やいやいと騒ぎだした。
可愛い教え子たち。これだけで頬が緩んでしまうなんて俺も丸くなったかな。











「あ。カカシ先生、旦那さんが呼んでたってばよ」



「旦那…」










…じゃあ俺は奥さんですか。
とツッコミを入れる前に













「カカシ奥さん、こんなとこにいないで早く帰らなきゃね」















サクラに満面の可愛らしい笑顔で言われてしまった。 
ついでに,うちなるサクラのイヤらしい笑顔も見えた気がした…。 

















三人と別れ、アスマの部屋へ向かって歩き出した。
ついさっきまで忘れていた自分の誕生日なのに。
こんなに楽しみになるなんて。
浮かれた足は止まらない。
にやけた顔も止まらない。
早まる鼓動も止まらない。




子供みたいだけど、アイツにおめでとうって言われたい。 







「アスマ〜」




わざと猫なで声を作って鍵のかかっていない扉を開けた。気配はあるが…静か。





「アスマ〜…?」









廊下を突き進みリビングに入るとようやくヒゲ熊出没。
ただしソファにて冬眠中。









「……」
 







部屋の中はいつもどおりで、空の酒缶から臭うアルコール臭さはあっても、祝い
のムードは感じられない。
額あてやベストが床に散らばっているあたりアスマも任務帰りなのだろう。
疲れているんだ。 
勝手に祝ってもらえると期待してたのは俺なんだけど。
何だか少し悲しい。
ソファを背もたれに床に膝を抱えて座る。






「…早く起きろっての…」






 軽くヒゲを引っ張ってやった。

   














「…カシ……カカシ」









煩いなぁ、聞こえてるよ。







「起きたか?」








耳元で囁く低い声。ハッと後ろを振り返ればアスマがにたにた笑っていた。
もしかして俺、寝てた?








「ていうかさ、起こすならもっと爽やかに起こしてよ」


「俺の爽やかなんか見たいか?」





スンマセン。想像するだけで吐き気が…。 
低い声がゾクゾクするくらい気持ちよくてもっと聞きたい、なんて言えない。
言ってもいいんだろうけどね。こんな日じゃなきゃ言えない。小さなわがまま。
そんな考えが通じたのか(やっぱアスマは凄い)先よりも一段低い、
でもよく聞き取れる色気のある声で















「誕生日、おめでとう」 












嬉しくて涙が出そうだった。
もう他に何もいらない。本気でそう思った




アスマの隣に腰をかけた。








「ほら、プレゼントだ」

「ぅえ!?」











予想だにしていなかった言葉に間抜けな返事をしてしまう。
まさか貰えるなんて思ってもなくて。
何度もアスマと包装紙を見比べた。








「早く開けろよ」









呆れるでもなく、せかすでもない優しい声色に心拍数が上がる。
今日のアスマはとびきり優しい。
それは手のひらより少し大きいくらいの平べったい包み。
ワクワクしながらリボンに手をかけた。 











「わ…これって……」










イチャパラの最新作。
見たことない表紙だからまだ出回っていないのだろう。











「まー…たいしたもんじゃねぇけどよ」 










申し訳なさそうに謝るアスマに、何の文句がつけれようか。
必死で自来也様に頼みこんだんだろう。
ぺこぺこ頭を下げるアスマが目に浮かぶ。







俺の、ために。











中身はみていないが何だか真ん中がややボコっと膨らんでいる。
シオリかなにかだろう。
さして気にもせず、また包みをかけた。








「ありがと、大事に読む…」 










言い終わる前に視界が真っ暗になり、言葉を紡げなくなった。 
後頭部を抑えられて深い口づけを交わす。 













「っん…っぅ…」












手入れされたヒゲが肌に当たる。
くすぐったくも、それも心地よい。
キスの合間に何度も「おめでとう」と言ってくれた。    
大好きな低い声で。









あぁ、この日に生まれてよかった。
初めてそう思った。
来年のこの日も、二人でいられたらいいな。 












後日。
ページを飛ばすことなくイチャパラを読み進めていった。
主人公とヒロインが何処か俺とアスマに似ていてあっという間に読み、
もうクライマックスにさしかかっている。挿絵のページを開くと…。












「は…ぁ?」 












しおりだと思った本の膨らみの謎が解決した。
イラストの月の形にあわせて、銀色の輪が埋め込まれていた。












「これ…」










取り出して思いあたる指にハメテみれば、予想どおりぴったりサイズだった。












誕生日当日に渡さないこの演出…なんなのよ。
俺は上忍待機所で、人目も憚らずに泣いてしまった。 














HappyBirthday。












終。




<あとがき> ここまでお読み頂きありがとうございます。 3ヶ月以上放置されていた糖分多すぎ拍手文です・・・。 ちゃんとはたけさんのお祝いになってますでしょうか?? 戻る