シカマル★誕生祝い★







早く歳をとりたい。
そう思うようになったのはコイツに出会ったせいだ。
この日だけは不毛な願いだとわかりつつ埋まらない差が縮まることを祈る。








早く歳をとりたい。 















任務も終わり空がオレンジ色に染まる夕刻。
聞きなれた声に呼び止められた。 









「シカマル」









返事をするより速く、俺の体は宙に浮いていた。
抵抗する間もなくアスマの肩に担がれる。









「帰るだろ?」









聞かなくたって行先は同じことわかってるくせにイヤらしい奴。
それでも当たり前のようにいつも聞いてくれることが 嬉しかったりする。









「おめー、重くなったな」

「成長期だし」

「そうか」







心底俺の成長を嬉しそうに笑うアスマに俺も頬が緩む。
父ちゃんや母ちゃんに言われるのも嬉しいが、コイツに言われるのは格別嬉しい。
少しだけ認められてる気がするからかな。 











肩に担がれたままアスマの部屋へと入る。

何だか甘ったるい匂いが充満している。
いつものヤニ臭さはどこへやら身を潜めている。


 





「ぅわぁ!」







真っ逆さまに顔面からベッドに落とされた。鼻が潰れるっつーの!









「いって…」










そんな俺を心配することもなくオッサンは鼻歌まじりにキッチンへと消えていく。
本当に自分の本能だけで生きているとしか思えない。
それでいて驚くほど優しかったりする。





甘い香りが一層強くなる。






「食え」








キレイに飾りつけされたケーキ。 
ほらね。アスマは優しいんだ。いつだって驚かせてくれる。










「…アンタが作ったのか?」

「おうよ」









ろうそくも立てるか?と言われたが丁重に断った。
誕生日ケーキに年の数のろうそく…なんて子供すぎて恥ずかしい。  










「年寄りくさいシカマル君の為に甘さ控えめだ」

「へーへー、あんがとよ」





こういう時に素直にありがとうって言えない俺は何て
可愛げがないんだろう。
もっともアスマも気にしてる様子もないけど。 
切り分けられた苺乗せケーキにフォークさし、一口。









「甘くねぇ!」










ちょっとプロじゃないかと思うほど美味い。
旨さに感心している場合はなかった… 
目の前には生クリームをたっぷりつけた苺を口にくわえてニタリ笑いのヒゲ面。
有無を言わさずソレが口に入ってくる。









「っ〜んっ!」










一口目と同じケーキの筈なのに、酷く甘いものに感じた。









「誕生日おめでとう」











やっぱりコイツに言われるのは格別だ。
嬉しくて泣きそうなの、バレてねぇかな。
ありがとう、なんて口にできないからギュッとアスマの手を握った。
ちゃかすことなく握り返してくれたからまたウルっとしてしまう。






俺って どんだけこのオッサンに惚れてんだよ…。
手は握ったままでアスマはあぐらをかいて、そこに俺を座らせた。
嫌でも体格差を感じさせられる。むかつくので体重をかけて背もたれに使ってやる。







「随分骨太になったなぁ」

「…そう?」








華奢だ華奢だと言われる俺でも成長しているらしい。
アスマといると少しも感じないんすけど。
アゴを上に向けたらアスマが優しく笑ってた。   








「シカマル」

「あんだよ」

「浮気すんなよ」

「めんどくせぇ」









錯覚だろうとなんだろうとアンタとの差が 縮まる気がするこんな日を、他の誰と
過ごせというんだ。






「へっ。あんたくらいの体格になったら浮気してやらぁ」

「おー、期待してまってるわ。」








棒読みでそう呟くアスマに羽交い締めにされた・・・。







HAPPY BIRTHDAY。







【おまけ】↓↓







「おい、ついてるぜ」






ようやく解放された俺はアスマのヒゲについた生クリームを舐め取ってやった。






「・・・・・。」








照れているようなオッサンは放っておいてテーブルに向きなおす。
本当に舌でとろけるものだから、あっという間にカットした分を食べてしまった。
新しく切り分けようとすると、後頭部に鈍い痛みが走った。









ゴッ!!!!








「わりぃ、手が滑った★」









く・・・くそ熊!!何しやがる!!







さえも言葉にできず、口も鼻も頬も額も生クリームまみれになってしまった。
どっかの誰かが後ろから殴るからケーキに顔ごといってしまったのだ。




もったいねぇーー・・・。





ケーキから顔を上げ、舌の届く範囲で舐めていると・・・







「今日は一段と旨そうだなぁ、シカマル君」



















盛った熊に顔中舐められましたとさ。











終。

<あとがき> ここまでお読み頂きありがとうございます。 これも超放置していたシロモノです・・・。 まったくお目汚しですね。今読んだら。 でも記念なので保管しますw 戻る