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肩車





アカデミーの雑用に駆り出された帰り道。俺たちは木を背もたれにし、
涼を取る為に木陰に腰を降ろした。空を見上げる。
アカデミー生の試験官のような仕事で、ただ座ってみているだけだったから、体を使うことも無く
たいして疲れてはいなかった。


「眠かったなー・・・。ふぁぁああ・・。」

空からまぬけな声の方に視線をもどせば、熊の大あくび。


「あんた・・あくびしすぎだっつーの。」
「眠いんだから仕方ないだろ。煙草も吸えないしよー・・。」

これでも上忍。真剣なアカデミー生たちの前で気を抜きすぎ。
腐っても上忍。たかだか数時間の禁煙に愚痴るなよ・・。
この男は反面教師にちょうどいい。


「シカマル、ひざまくらしたくない?」
「したくない。」


だからいい大人がそれくらいでしょげるなっての。
ムスっと口をしめてアスマも空をみあげだした。







「貸して」
「はぁ?」


わけわからん、と口をポカンと開けたアスマの腕から無理矢理バングルを奪い取る。
右腕にハメてみるが、予想どおりスルスルッと落ちてしまう。




「……」



あっけなさすぎて空しさが襲う。
サイズ違いもいいところ。まるで俺とアスマみたいに。
背も歳も力も、全てがサイズ違いでちぐはぐ。
どうしてこんな子供を相手にしているのだろう?
こんなに不釣合いなのに。
守られてばかりの子供なのに。



早く大人になりてぇ。本気でそう思う。









ばかばかしい考えだとわかっていつつも試してみたかったのだ。
仕方ないからバングルはあきらめて額あてに手をかけた。アスマは何も言わずになすがまま。
解かれた額あてをシカマルは自分の額にあてた。




お。





これは・・・・









「く…くっせー」




「汗と涙の勲章だ」




やっと開いた言葉がそれかよ。
確かに、汗の匂いと煙草の匂い…それに染み付いた血の匂いが。
アスマが越えてきた歴史を感じさせた。
決して埋まることのない、自分との差。
ちぐはぐだ。



やめた。






ポイっとその辺にほかってやったら「捨てるな馬鹿」て怒られた。怖くねーし
次はポーチを漁りだす…





こりゃもらえないだろうな。アスマ専用のチャクラ刀。試しに握ってみたけど…





「にあわねー」





笑われた。んなこと自分でもわかってるし!






はぁ…背もなかなか伸びねーし…大人になってみてぇなー。
早く大人になって、空を眺めたいな。きっと今とは違う見え方するんだろうな。







「よくわからんなー今日のシカマルは」






額あてを直そうともしないせんせーは煙草の火を消した。



「ほら」




乗れ…って肩にですか?






「お前が見てー大人の視線見してやるよ」




…ばれてんじゃん。ちょっと悩んでからアスマの肩に足をかけた。





「うわっわ!」





「ちゃんと捕まってろよ」





思わず目をつぶってアスマの固い髪を握る。アスマが俺を落とさないようにそっと立ち上がる。





「…もう見ていい?」





「どーぞ」






ゆっくりまぶたをあげれば、ソコには身長190cmの世界が広がっていた。







「すげ…」





空が近い。手を伸ばせば曇だって掴めそうだ。






「ちなみにだな。そこの高さがシカマルの身長な」





いつの間にか、そばの木に額あてが巻き付けてある。





「こんな見下げてんのか…アンタ」



「首いてーよ毎日」



「俺だって見上げてんだからいてーよ」




早く大人になれよ、と呟いてアスマは歩きだした。



「重くね?」



「全然」




俺、めっちゃ髪掴んでるし膝で顎蹴ったりして…痛いはずなのにな。アスマは、大人だ。
早くあんたに近付きたいよ。




「シカマル」



「ん?」




「お前いつも空見てるだろ」



「…うん」




「空に近い俺のことも、ちゃんと見てくれよ」



「バカかっ」



当たり前だっつーの。俺の見上げた視界には空の前にいつもあんたがあるんだから。




「空にヤキモチ妬いてんなよ」




「あんだけいつも幸せそうな顔で見てりゃ妬きたくなる」





前言撤回。空にやきもち妬くようなの男は大人じゃねーや。
そういうアスマが好きなんだけど・・・な。






「昔さー・・・」
「ん?」
「親父に・・・一度だけこうしてもらったことがあったなぁー・・・。」

顔は見えないけど、遠い記憶を懐かしむような声。
アスマは滅多に自分のことは話さない。聞いても大体はぐらかされてしまうから
もう聞かないようにしていた。だからこうして話し出すことがとても不思議だった。

「親にとっちゃ子供ってのはいつまでたっても子供なんだよな」

ずり下がってきた俺を抱えなおして、さらにアスマは続けた。

「まー、あの親父は里のもの全員家族だーなんて言ってたからな」

くっくっと笑った。

「図体がでかくなっても、子供は子供なんだよ」
「・・・アスマから見たら・・・俺もずっと子供?」

なんとなくそのポジションは嫌だった。大事にされるのはいいけど、ずっと守られっぱなしの
子供は嫌だ。その考えを見透かしたかのような答えがかえってきた。


「いや・・その・・・なんだ。俺はシカマルが子供だから守りたいわけじゃない。」

「・・・え?」


「鈍いやつだなーこういう時こそ頭フル回転させろよ、馬鹿。」

「・・あんたにいわれたかないよ」

アスマの一言一言を必死で分析する。含まれた意味を考える。

「大事なやつだから守りたいってことよ。わかったか?」
「・・・言われなくてもわかってるよ!」
「かわいくねー」
ケラケラ笑うアスマに、嬉しくて涙目なことをばれないように顔を伏せた。



「あぁ!!額あて忘れてきた!!」
「ばっかやろー!逆戻りじゃねーか!」
「いいだろが、おまえは乗ってるだけなんだから」
「んじゃ降りるからいいよっ!」
「ガタガタうるさいんだよ、クソガキ!」
「おっさんが無理すんじゃねーよ!」

こんな会話をしながらもう、アスマは走り出していた。





終。






<あとがき> 歳の差カップル、たまりません★めんどくさがりなシカマルも、たまぁに背伸びしたい時が あってもいいかなっと。守られっぱなしは嫌だなぁって。 シカマルが思ってるほど、アスマせんせは子供に思ってないのです。 ・・・て説明しないとわからないような駄文スミマセン;かたぐるまな二人をかきたかっただけですv MAIN