知り合ってから20年、つきあいはじめて1週間。
見飽きた、を通り越して当たり前の風景と化した姿が急にかっこよく見えてしまうのは






惚れた欲目だろうか?








これからも、よろしく。

アパートの階段を上るとカンカンとよく響く。まるで自分の気持ちと同じように浮かれたリズムだ。 部屋の前に立ち、ドアに手をかけると鍵は開いていた。 (不用心だなぁ…) 意識はすぐに鼻にいった。おいしそうな匂いが漏れている。 アスマの用意する夕飯ならなんだって美味しいが、献立はなんだろうと考えると自然と顔が緩む。 上がった心拍数を落ち着かせるため、深呼吸を一つした。 勢いよく扉を開けて、まずは挨拶! 「た・だ・い・ま!」 「ごくろーさん。飯できてるぜ…って何にやにやしてんだよ」 「…いやぁ、帰ってきて待っててくれる人がいるっていいなぁ」 これまで1人で生きてきたカカシにはこれ以上はない人のあたたかさ。 ただいま、を言える日が来るとは思ってもみなかった。 「お前…そんな可愛いこと言ってると、とって食うぞ」 「エロ熊〜俺は腹減ってるんだから飯食うの!」 「……」 アスマはごしごしと目を擦った。熱に浮かされているのだろうか。 まさかカカシがこんなに可愛く見えるとは。 つきあいだしたって何も変わらないと思っていた。 冗談で言ったつもりが、本当にとって食いたくなってきた。 「あ!肉じゃがだ〜旨そう」 額あてと口布を外したカカシは行儀よくテーブルに料理が並ぶのを見つめていた。 人には見掛けによらない特技があるもので、アスマの手料理は不思議なほど美味しい。 一週間に二度は好物の茄子の味噌汁を出してくれるのでカカシは文句のつけようがなかった。 2人揃っていただきます、と手をあわせた。 「ちっとばかし薄いかもしれねー」 時間がなくてな、と付け足した。当然のごとくアスマにも任務がある。 「いいよ。足りない分は愛情でカバーしてくれれば」 「馬鹿」 言うほど味は薄くはなく、猫舌なカカシにも食べやすい熱さに冷まされていた。 「気がきくねぇ。いい奥さんになるよアスマ」 「へっ。なりたかねーな」 「俺も見たくないよ、髭面の奥さんなんてさ」 「気持ち悪いわな」 アスマが誰かのものになるとこなんか見たくない。 黙って食べ続けるアスマを見つめ続けた。 器用な指先や、唇の動き。瞳の色から垂れた前髪まで。その一つ一つどれからも 目がはなせなくなる。 (ヤバい…やっぱりかっこよく見える) 「カカシよぉ…」 突然の不機嫌そうな低い声に箸を落としてしまった。 「な…何?」 「暑いからよ…窓開けてくれねーか?」 「う、うん…」 あまりに見つめすぎて怒ったわけじゃないのか。 ほっと胸をなでおろし、窓を開けにいく。 「…視線が熱すぎるんだよ…」 ボソっと呟いた声は確かにカカシにも届いた。怒っていたのではなく。 「照れてるの?」 「……別に」 赤くなった顔を見られぬ様にカカシの落とした箸を洗いにいった。 一週間前は長い付き合いのただの同僚。悪態ついて飲みにいって語り合っていた。 若い頃は生傷絶えない喧嘩もよくしたものだ。 今は青臭い学生カップルのような、些細なことで照れあってしまう恋人。生傷どころか 触れるだけで心臓が破裂寸前になる。 たった一言で人間こんなにも変われるものかと気づかされた。 はじまりはアスマから。 「腹が立つくらいお前が好きだ」 なんとも彼らしい表現に笑ってしまったが、すんなり受け入れた自分にも驚いた。 「早く食えよ」 「あ…うん」 元の場所に座りなおし、アスマから箸をうけとった。 指がほんの少し触れた。 「…あ…ありがと」 意識しすぎてうわずった声になってしまった。 それを気にすることもなくアスマは続けた。 「明日…起きれるか?」 「…多分」 「泊まるか?」 「…うん」 「明日…合同だぜ…」 「ホント!?」 アスマの10班カカシの7班合同任務は当然のことながらお付き合い始めてからは初だ。 任務中もアスマが見れると思うとテンションも上がる。 「わぁい!じゃ、寝坊の心配はないねー♪アスマ起こしてね」 「人をあてにすんな」 「ケチ」 つれない返事にカカシはむくれた。 (いいけど…いいけどさ…ちょっとくらい起こしてくれたらって期待しちゃったじゃない…) 「俺はな、お前の可愛い寝顔見て寝れないかもしんねーだから…」 「アスマ……vv」 翌日にサクラやいのに 「バカップル」 だとトコトン馬鹿にされるのは言うまでもない。 これからも、よろしく。 終。 戻る