気づかれている。
わざわざ言うほどの事でもなく、自分から口にしたことはないが
気づかれていると思う。
時々視界がぼやけて,物をよく見ようとして目を細めると




「老眼か?」




なんて冷やかされる。
さすがにこの年で年配扱いされるのもしゃくだから、雷切喰らわせつつ







「疲れ目かなぁ」







と返せば







「ブルーベリー食え、ブルーベリー」







何、この答え。
心配してんのか馬鹿にしてんのか。
…やっぱり気づいてない…か…?












視力矯正器具

視力が下がることなんて。はなからわかっている。 誰だって年を重ねれば起きる現象。俺の場合、それが人より少し早いだけ。 大したことじゃない。 「おー、待たせたなぁ」 大柄な男がこちらに歩みよってきた。 「遅いよ」 「わりぃわりぃ。焼肉食ってた」 先に呑みに行く約束した俺を散々待たせて焼肉ですか。 …帰りもせず同じ場所で一時間も待つ俺も俺だけど。 「んじゃ行くか」 当たり前のごとく俺の手を握り、遅刻男は歩き出した。 歩幅が合わせきれずに、つまづきそうになる。 「っ…と!」 「老眼の次は足腰弱ってんのかぁ?」 あ〜ムカつく! こんな男に支えられたことがムカつく! 腹が立ったから道中は一言も口を聞いてやらなかった。 そんな様子もおかしいのかアスマはニヤニヤしている。 誰だよ!こんな奴と付き合ってる物好きは! 「お前だろうが、カカシ。」 「は…?」 あら…どうも声に出ていたみたいでアスマはゲラゲラ笑っている 。 さすがに顔は赤くなるのが自分でもわかる。プイっとそっぽを向いてやった。 ……手は繋いだまま…。 アスマに連れていかれた店は初めてだった。 扉すらわかりにくいほど蔦に覆われている。中に入ると室内はヒンヤリとしていた。 見渡す限りの植物たち。その合間に赤やら白、青などキャンドルが淡く光っている。 なれた様子でアスマは足を進め、角の席に腰を下ろした。右も前も後ろも植物に 囲まれ、ちょっとした個室のようになっている。 「どうだ。目に優しい店だろ」 まだ言うか!と言いかけて口を閉じた。優しい笑顔は間違いなく心配してくれて いると気づいたからだ。 各々に飲み物をオーダーし、とくにすることもないのでぼんやりと向かいのアスマを見つめた。 淡いキャンドルに照らされて、何だか男前が上がっている。 ほら。 煙草を取り出して、火をつける仕草。 雑な性格の割に繊細な指つかい、好きなんだよね。 「…ぉい」 キャンドルがアスマを赤色に照らし…いや、本当に赤い。 だってアスマ側に置いてあるキャンドルは青色だ。 「独り言は小さくいうか、心ん中で言え」 「……?」 ガシガシと頭をかくアスマ。 どうした…あ! 「口に…」 「雑で悪かったな」 もう今日は口を縫いつけてしまいたい…。 気まずい気分で俯いていると タイミングよくドリンクが運ばれてきて、カチンとグラスを合わせた。 甘過ぎず苦すぎず。好きな味だ。 「ん…美味しい」 「酒の席くらい、それ外したらどうだ」 「あぁ…そうだね」 任務の帰りだったこともありそのままにしていた額あてを外した。 いつものことながら今日も少々使いすぎたせいで、左まぶたが少し腫れている。 これまた いつものことながらアスマは渋い顔をしている。 「痛くないから」 安心して欲しくて言ったつもり。 「何も言ってねーよ」 この男、誰より写輪眼嫌い、そして愛好家。 嫌いというか使いすぎると大抵不機嫌になる。 「見えなくなったら…どうすんだよ」 そして心配症。今すぐにそうなるわけじゃないのに、口ぐせになってる。 「大丈夫だって」 「視力下がってきてるだろ」 あら。やはり気づいていたか。 悪いけど、この宝モノ、簡単に使用禁止にはできないんだよね。 アスマだってわかってるでしょ? 「見えなくなる前に言えよ」 「ん?」 「俺がお前の眼鏡になってやるから」 キャンドルは赤色と青色。 まるで俺のチグハグな、そしてアスマがキレイだと誉めてくれる両目のよう。 赤色の灯よ、どうかこの顔の赤みを隠して。 眼鏡ってさ、ずっと使い続けるものだし。 遠回しにプロポーズみたい、なんて考えてしまうのは。 あぁ。既に酔ってるのかも。 グイッとグラスの中身を呑みほした。 「……呪いの眼鏡だね」 「?」 「かけたら一生外せない眼鏡、デショ?」 アンタ好みに矯正してもらって結構。 なんてね。 終わり・・・。
<あとがき> ここまで我慢して読んでいただき、ありがとうございます。 シリアスで眼鏡かけたカカシさん、かっこいいアスマの予定が、 どうしてこんなことになったのか・・・それは誰にもわかりません(オイ) アスマは写輪眼反対派なんですよ。チャクラ切れですぐに倒れちゃうから、心配で心配で・・・。 あんまり使ってほしくない、て感じ。 でも、赤と青がキレーだから好き、みたいなね。 ・・解説になってしまった・・・・ 戻る