泣きたいくらいにあんたが好きで、
泣きたいくらいそばにいたい。
何もかも面倒くさがる俺が
こんなに一つのことに拘るなんてかなり珍しい。
あんたと以外、
ありえない。
泣き虫への最善策
「何を泣いてんだぁ?」
「…っぅ…」
ギシギシと軋むベッドの上でシカマルは動物のように四つん這いにさせられていた。繋がる部分の痛みに涙が流れる。
「リラックスしろ、リラックス」
「む…無理…っ」
余裕の声に苛立ちを覚えるが、ろくに抵抗もできない。背中をつーーと熱いものが触れる。
「っあ…っ」
アスマの舌はさらに首筋から耳朶まで味わうように攻める。
「シカマル」
腹に響くような低音の声で名前を呼ばれるだけでも充分に満たされる。ゾクリと電気が走ったように背中を反る。
「…シカマル」
「っアスマぁ…」
何度呼んでも呼び足りない。
何度聞いても聞き足りない。二人は繰り返し名前を呼び合う。
幾らか力が抜けた頃を見計らい、アスマは腰を動かしはじめた。
「っ…ん…」
顔が見えないのは辛いがいつもより奥までアスマが入るのを感じる。シカマルはシーツを握りなおした。アスマの掌が被さる。
「…いつまで泣いてんだよ…」
「…っ…」
いつから泣いてるか、何故涙を流してるか、誰が泣かしているのか、わかっているのにいやらしい質問をしてくる。
泣きたいくらい気持ちいいこと、わかってるくせに。
「…バカ…っ」
小さく呻くような返事しかできない。それはアスマを笑わせるくらいの些細な悪態でしかない。
「何が嫌なんだよ」
ニタニタ笑っているのは間違いない。
「…かっこ…」
「…甘ったれ」
そう吐き出すアスマの声色の方が余程甘いとぼやける頭でシカマルは思った。その声と同じくらい甘い手つきで体勢を変えられる。
ようやく、アスマと目線が合う。
「泣きすぎ」
赤くなった鼻にキスをされる。優しくてまた泣きそうになったから肩に噛み付いてやった。
「馬鹿、噛むな」
頭撫でられてキスされて、まさに"馬鹿"なくらいアスマに溺れていく。
「たまにさー考えるんだ」未だに目を赤くしたシカマルは楽しそうに笑った。
「ん?」
「最中にさ、次はあの手でくるのか、あっちの手でくるか」
相手の言動、行動から何百パターンと考えだすのはシカマル得意の分析。
「…おまえ…そんな色気のないこと考えてんのか」
「だけどよー途中でやめた」
「なんで?」
「最善策がみつかんねーから」
「……はぁ?」
俺が下手くそだっていいてぇのか、こら。とあからさまに不機嫌顔なアスマにシカマルは頭突きをお見舞いした。
「痛い…」
「バーカ。何もわかってねーな」
「…だから何だよ」
「アンタのしてくれること全部が最善なのにその中から最善なんて決められねーつの」
屈託なく笑うシカマル。
アスマはこの泣き虫の対処方に最善策をみつけられなかった。
終。
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