自慢の髭をさわさわとイジリながら、黙っていればモテそうなのに、と悪態をつけば それはお互いさまだ、と心地よい低音と拳がカカシの頭上に降ってきた。 この横暴な熊とは長い付き合いで、どうゆうわけか今では寝床を共にする仲だ。 自分でも覚えていないくらい、いつの間にかこの腕を枕にして眠ることが自然になっていた。 「初めて会った時に、アスマに言われたことまだ覚えてるんだよね〜。」 「・・・何か言ったか?」 ふふっとカカシは笑った。 「お前、楽しくもないのに何笑ってんだって。初めて他人に見透かされたと思ったよ。」 「そりゃ・・ヘラヘラしてて不気味だっただけだぜ・・・てかよ」 「アスマって名前はかっこいいよね。」 「・・・あのよー・・・」 「ヒゲもなけりゃ男前なのに。」 「いい加減に・・・。」 「アスマ。」 「・・・何だよ。」 「呼んだだけ。」 「…俺は寝るぞ、明日も早いからな。」 延々と話しかけ続ける俺に呆れながらも腕枕を解くでもなく、どかすでもなくそのままにしてくれている。 優しいアスマ。 知ってるんだからね。 俺が眠りにつくまでは絶対背中を向けずにいてくれること。 アスマは、優しい。 だから。 絶対寝かしてやらない。お互いに次の約束なんてできない職業。 だから。 また今度、なんてこないかもしれないんだから。 だから。 今はアンタの顔を見ていたい。声を聞いていたい。 そうだ。絶対アスマが寝れなくなる一言を口にしようか。 絶対にこれを聞いたらアスマは寝れない。写輪眼で見切らなくてもその後の行動は容易に想像がつく、とっておきの言葉。 「お〜い、おっさん。寝るなよ。」 「誰がおっさんだ!!」 ってね。あの大きな掌で殴られるだろうな。 「お〜い、おっさん。」 「誰が」 「愛してる。」 「・・・・・//」 裏の裏まで読め、ってね。 これからも俺はこの耳まで真っ赤な可愛いおっさんの横顔を見ていられるのだろうか。 「照れてるの?」 「・・・って・・・照れるか馬鹿。」 陽が昇って朝が来て、また日が沈んでも、ずっとアンタを見ていたい。 なんていったら気持ち悪いっていわれそうだから止めた。 いつでも俺は本気だけどね。 「・・・寝れなくなっちまったじゃねぇか。」 ぶっきらぼうな口調と反対にニヤニヤしちゃって。アスマがのそり、と体を起こすから俺の体も反動で投げ出された。 テーブルのタバコに手を伸ばした。 「俺も頂こうかな。」 「あん?」 「1本・・・」 「だめだ。」 「なんでよー?」 「キスする時、煙草くさくなるだろーが。」 「アスマはいつもじゃん・・・。」 「俺はいいんだよ。」 何て勝手な理由なんだか。それにもう十分煙草の匂いうつってるし。まぁ、いいや。 煙草吸ってる間は起きててくれるしね・・・・。 フーっと開け放した窓に向かって煙が消えていく。アスマの目に似た黄色が強い金色の月。 黒一色の夜空によく映えている。 「早く寝ろよ。」 「寝たくない。」 「ったく・・・わがまま言うなよ。」 くしゃくしゃとアスマは髪を撫でてくれた。 優しいアスマ。 時折子供じみたことを言ってくる。 理由はなんとなくわかっちゃいるがな。 そんなカカシのわがままのせいで今日も俺は寝不足だ。 勿論、わがままのせいじゃなく、当の本人から発せられる甘い香りが大きな原因なのだが。 いい歳して寝れないだのなんだの言うアイツもアイツだが・・・ いちいちそれを聞いちまう俺も相当いかれちまってるな。 終。
<あとがき> うわわわ・・・甘すぎました・・初アスカカ。大人スパイスが足りません・・・。 戻る