有難トウ×然様ナラ4

「カカシ!」 明るい声にまた心臓が跳び跳ねた。 紅には悪いけど、この声で名前を呼ばれるのは心の底から嬉しい。 酔い潰れた、もしくはアスマに殴られ失神中の上忍、特上、中忍の山を掻き分け、 眉間にシワを寄せるアスマ の側へよった。 「お前よ〜それは何だよそれは」 言いたいことはわかってる。 口布が気に入らないんでしょうね。 「アンタのせいだから」 「知るかよ」 こっちの事情も介せずに、ズルっと口布を引き下げられた。 首元隠れてればいいんだけどね。 ・・・て問題はそんなことじゃなくって。 「そんなことより!アンタ、いきなり泣かせてんじゃないよ」 「カカシだったらあれくらいで泣きやしねーよなァ」 涙は女の武器っていうけど、コノ男の防御は鉄壁だ。 鉄壁過ぎて誰の声も届かない。 いつも前を向いていると言えば聞こえはいいけど、ようするに自分勝手なんだ。 「わかんないよ。俺だってあんなこと直に言われたらヘコムかも」 「お前には言う必要もないしな」 何かさっきから会話がズレてない? 今日はアスマが結婚の祝いの席でしょうよ? どうして今日に限っていつも言わないようなこと、口にするのよ。 俺だったら・・・とか、言う必要ないとか。そんなに信用されてるのね。 ・・・俺が一番大事にされてるって勘違いしちゃうじゃない。 「お前も呑めよ」 ごろん、と無理矢理にお休み中のゲンマの体を転がしてスペースを作ってくれた。 (ごめん、ゲンマ…今度奢るからね) 「お邪魔します」 隣に座り、改めて横顔を見つめた。 酔って赤い顔とか、手入れしたヒゲとか、煙草をもつ指とか、 いつもより少しだけセットされた髪とか… アスマを構成する全てのものが愛しくて。 この男が好きなことに気づかされる。 まだ、一緒にいたい。 離れるには早すぎる。 「オメデトウ」 カチン、とグラスを合わせて決めセリフを呟いた。 練習のかい虚しく、酷い棒読みだ。嫌だな。 未練たらしい気持ちが伝わらないことを祈ろう。 「ありがとよ」 気にした風もなく、アスマは次々とグラスを空にしていった。 何処を見つめるでもなく、ただ前を向いて。 「アスマ」 こっちを向いて欲しくて名前を呼んだ。 胸が跳ねるようなあの声でもう一度名前を呼んで欲しかった。 「カカシ」 低い声はすぐに耳に届いた。ドキドキするようなものではなく、ドキリと嫌な予感をさせた。 「有り難う、な」 「え?」 「いや…今日。ここに来るの嫌だったんじゃねーかなと思ってよ」 「そんなこと…ないよ?」 次へ