新婚さん、いらっしゃい2

そんなこんなで新しい部屋も無事に契約し、二人は必要な雑貨を買い出しにきていた。 「あーやだやだ。こんなとこ見られたら笑われる」 「まだ言うかお前は」 「だってよー、雑貨屋で熊と手繋いで仲良く買い物だぜ?」 「ガキは捕まえとかないと迷子になるからな」 2 二人の惚気オーラに視線が集まっていることに彼らは気付いていない。 「〜♪〜♪」 鼻歌まじりに、カゴにポンポン物を放り込むシカマルを見て、微笑ましく思った。 口で言うよりも楽しんでいるようだ。 「アスマ」 「あ?」 「あれ、取って」 誰も取れないような棚の上部にホコリ被った大きな熊のぬいぐるみ。 「売りものか?」 「あのぼろ汚なさがいい」 古くさいアパートといい、このぬいぐるみといい、若者らしくない好みだ。 「デカすぎて邪魔にならんか?」 「あんたよりは小さい」 「……そりゃそうだ」 カゴを床に降ろし、アスマが背伸びをしてようやく取れる高さ。 「わー不細工だなこの熊」 「せっかく取ったのに、なんだよそれ」 なんとなく自分に似た熊のぬいぐるみに同情した。 こういう実用性ないものをシカマルが選ぶのは相当珍しい。 アスマは肩に担いだ。 帰り道はシカマルが熊をおんぶした。背の半分以上の大きさがあり、重たい。 歩き方もヨロヨロしている。 「何に使うんだよ、ソレ」 「枕」 「……でかっ」 「テレビも買い換えたいよな〜冷蔵庫も。本棚も欲しいなあ、空気清浄機は外せない!」 「お前、ノリノリだな」 「悪いかよ」 どうせ住むなら快適な方がいいだろ、とシカマルはむくれた。 「っくく…いいけどよ」 これからは四六時中、この可愛くないシカマルの相手をできると思うと楽しみで しょうがない。 新しい部屋の前に到着。外壁も白一色で塗料の匂いがプンプンと漂っている。 ごそごそとポケットから鍵を二つ取り出す。 「おら、お前の分」 「……」 ガチャガチャ。扉を開けるとこれまたシカマルの好みからは程遠い 新築の匂いが広がっていた。 「…何つったってんだよ」 中にシカマルを押し入れ、鍵をかけた。 シカマルは自分の横に熊を降ろした。 「お世話になります」 ぺこっとシカマルが礼儀正しく頭を下げるとぬいぐるみの熊も同じように頭を下げた。 「…!」 ぬいぐるみが生きているわけもない。が、一瞬そんな気にさせられてしまった。 よく見ればシカマルの指は印を組んでいる。 影真似の術。 印を解いたシカマルは顔を真っ赤にしていた。 口では素直に言葉にできないものだから、わざわざ”めんどくさい”ことを してご挨拶。 こんなところで秘伝の術を使う恋人が可愛くないわけがない。 「しゃあねぇなー、世話してやるか」 お世話になります。 お世話します。
<あとがき> ここまでおつきあいいただきありがとうございます♪ 甘くて甘くて飽和状態な砂糖水・・・ですね。 合鍵とかいいですよね〜vv こんな都合のいい使い方ができるシカマルの技が私は大好きですww 戻る