テレパシー
アスマは俺の髪を触りたがる。
時間のない朝だろーと、風呂上がりの濡れた髪だろーと、
とにかく触りたがる。
朝なんかは自分で結った方が早いし綺麗なんだけど、何故かアスマにやらせてしまう。
おかげで毎日遅刻ギリギリだ。
今日は任務の最中に紐が切れてしまったので、そのままにして帰ってきた。
帰り道、ずーっと頭を撫でられながら。
不思議なことにこれが悪い気分じゃ、ない。
風呂上がりに聞いてみた。
「なんでそんなに触る?」
今もタオルの上からわしゃわしゃと髪を乾かしてくれている。
「嫌か?」
「別にいいけどよ…朝とか急いでる時もあるし」
「お前の頭にな、念を送ってんだよ」
うさんくさい話をアスマが話すとますます怪しくなる。
いつだったか本で読んだことがある。手から気をだして怪我を癒したりする力がある人間がいるって。
もちろん100%は、信じてはいないけども。
「ハンドパワー?」
「そう。面倒くさがりが治りますよーにってな」
「ばーか。んなことで治らねーよ」
筋金入りの面倒くさがりをなめるなよ?
「嘘。もっと俺に惚れやがれ!ってな」
「!!!」
時々アスマの言葉はどこまで冗談なのかわからなくなる。
くさいこと平気な顔で言ってのけるから。
「い…いいよ!もう自分でできる」
恥ずかしさを隠すためアスマの手からタオルをひったくり、自ら髪をふくことにした。
だってさ。
もう十分アスマに惚れちゃってるし。
一日の半分くらいおっさんのこと、考えちゃってるし。
夢にまで出て来ちゃったりするし。
頭ん中、アスマだらけだし。
そんな必要ない。
「んだよー頭がダメなら…こっから念送るわ」
目の前に影ができたかと思うと、
モサモサしてくすぐったいものが顎に触れた。
あ。
くち、塞がれた。
キスされた。
「…っ…んー!」
相変わらず強引だ。
「…通じた?惚れろー!って念」
「……ちょびっとな」
「ちょっとかよ!まだ足りねーってか?」
当たり前。
頭ん中だけじゃ足りないから、体中アンタだらけにしてくれ。
そんな俺の念、届くといいんだけどな。
終。
<あとがき>
お読みいただきありがとうございますー。
お互いベタ惚れな感じ・・・で!
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