危機とは程遠いのどかな景色が目前に広がっていた。
元10班による久しぶりの再会任務は彼らに似合ったのほほんとした内容だった。
時折モーモーとかメェメェなど鳴き声が耳に届くような場所にシカマル達はいた。



「本当にこんなとこ、見張る必要あるのかよ?」


此処に来て一週間、毎日繰り返される質問をアスマに投げ付けた。
これまた毎日繰り返す返事が返ってくる。


「忍とまで行かなくても、気の小っせぇ小悪党くらい出るかもなぁー」










フルーツタルト

陽もくれて、鳴き声にゲロゲロとカエルも加わる頃 アスマとシカマルは寝泊まり用に用意された小屋で忍具の手入れをしていた。 たとえ小悪党だろうと念には念をいれておかなければならない。 「2か月も俺らを警備によこすってことは何かあるんだろーよ」 「まー…何もない方がいいけど」 交代制で夜間は見張り、昼間は牛や羊の世話を手伝わされている。 今夜はいのとチョウジが見張りの当番となっているため、シカマル達は先程その作業 を終わらせてきたばかりだ。。 家業の鹿の世話になれているシカマルはさすがに手際がよかった。 「こっちに来てまで動物の世話やると思わなかったぜ…めんどくせぇ」 嫌いじゃないけどよ、と小声で付け足された。 「シカマルが懐かれるのはわかるけどよー…何でかなぁー俺にも懐くんだよな」 アスマが顔を舐められること数十回。 「旨そうなんじゃねーの?」 ケラケラと笑いながらシカマルは納得した。 動物は野性の勘が鋭く、驚くほど人間をよく観察している。 根っからの悪党には警戒して近づきもしないのだ。 だから髭を毛ずくろいして…もとい、動物にも好感をもたれる人柄には納得はする。 が、舐めまわされて顔中ビタビタになっていたアスマを思い出すと笑いが込み上げてくる。 「ひひひ・・・腹いてー!」 「笑いすぎー」 「いや…わりぃ。こんな任務に駆り出される上忍ってあんたくらいだなーて思ってさ」 中忍にも、なめられる、上忍。 散々笑いまくる恋人を見てアスマは溜め息を一つついた。 (絶対忘れてんな…コイツ) 今まで自分も元来の性格から恋人にマメな方ではなかった。 デートの時間を忘れることは日常茶飯事、とくに大事な日なんてのは覚えていた試しがない。 そのせいでよく怒られもしたし、また反省して直すこともなかったから別れる原因になったりもした。 それがどういうわけか、自分の半分の年齢の(しかも男)恋人に対しては変わってしまったのだ。 そのあまりの変わりように自分でもバカだと思った。 「シカマル、ちょっと休憩しないか?」 「ん?いいけど」 「ちょっとテーブル片付けろや」 肩こった、とボヤキながらシカマルはテーブルに広げたクナイを端に寄せた。 その間にアスマは何処からか紙皿とフォークを用意した。 「何、それ」 大きくも小さくもない中途半端なサイズの箱がテーブルに陣を取った。 「開けるか?」 恐らく中身は食べ物だろう。ならチョウジを待ってからの方が… 「いいんだよ。お前の分なんだから」 考えていたことが通じたらしく、くっくとアスマは笑った。 クリスマスの朝、一目散にプレゼントを開ける時のようなワクワクドキドキしながら シカマルは箱に手をかけた。 次へ