栗、拾いました2

あれから何年かたって、10班はバラバラになってしまったが、 秋になると必ずアスマと栗拾いに来るようになった。 あの時のチョウジのアドバイスどおり毎年毎年行っているせいかだいぶ俺らも 栗拾いマスター様(=チョウジ)に近づいた。 「だいぶ涼しくなったが・・・まだあっちーな」 首にかけたタオルで額の汗を拭いながらアスマがぼやいた。 落ちている栗を探すためとはいえ、このおっさんが下を向きながら歩く姿は滑稽だ。 体が大きいせいか、普段見慣れていないせいか、落ち込んでいるようにみえる。 似合わない。 「今年は少なくない?」 「秋祭りの後だからなー、ごっそり拾われちまったかぁ?」 そう呟いて、ほとんど実のついていない木を見上げた。 「木の下になかったら・・・近くの草むらに隠れてる場合もあるっていってたな」 「マスターが?」 「あぁ。栗拾いマスターが言ってた」 二人同時にあの時のことを思い出し、笑った。 普段は穏やかなチョウジが得意げに語ってたサマを。 ガサガサと草むらをかき分けると、イガが割れた大きな栗たちが拾ってくれと言わんばかりに待っていた。 「お。いたいた。」 「栗拾いマスターにもわけてやろーぜ」 「んだな」 手を動かしながら、また別のことを思い出した。 アスマの料理は何だってうまい。初めての栗拾い任務の日以来、栗ご飯は俺の好物になった。 しばらくそのイガまでに気に入って部屋飾ってた。手触りがアスマだったから。 我ながらなんて女々しいことしてるんだって思ってた。 ら・・・・。 おっさんの部屋にもイガが飾ってあった。何でも 「おまえのチョンマゲ、チクチクだろ?似てるんだよ。」 手触りが俺だったらしい。 それだけだったらまだ許せたんだ。俺だって同じコトしてるし。 「その・・・外側はチクチク・・・ツンツンしてんのに、中身は甘いんだぜ?おまえだよなぁ」 ・・・・思い出したら腹がたってきた! そこらじゅうのイガをアスマ目掛けて投げまくった。 「いってぇぇっぇぇぇーー!!」 尻にヒット。ざまぁみろ。 「俺は甘くねーんだよ!ばーか」 しばらくは武器になるな。栗。 なんて初めて思ったのもその時だったな。 なんだかんだいって今年も部屋には栗を飾るんだろうな。 俺も・・・・。 次へ