夏バテ








カランカランとガラス製のコップに二つずつ氷が落下する。冷蔵庫からよく冷え
た緑茶を取り出し、注ぐ。







「はいよ、シカマル様」







蒸し暑い部屋のソファでのびている少年にコップを一つ差し出した。チラッと視線をそっちに向けたがまた元
に戻る。





「緑茶かよー…夏は麦茶が相場だろー?」





「何でもいいだろが。冷たくてうめーぞ」







テーブルにシカマルのお茶を置き、ソファの僅かな隙間に座ろうとしたアスマを足蹴りする。








「いてーな」






「…暑いから、あっち座って」





部屋の主は、だらけた少年に大人しく従い、ベッドに腰を降ろした。
アスマが離れたのを確認し、さも面倒くさそうに体を起こし、シカマルは一気に
緑茶を飲み干した。氷を一つ口に含むと、また寝そべった。





アスマは何気なくテーブルに置かれた一枚のプリントを手にした。どうやらシカマルの任務予定表らしい。




「お前、今日任務なのか」




こんなにだらけてて大丈夫なのか。怪我して帰ってくるんじゃないかと心配になる。






「…まぁなー」




しかもシカマルが小隊長のようだが…。




(不安だ…)





再びプリントに目を戻すと…





「?!」







なんでまたシカマルの隊のメンバーに自分がいるのかと目を疑った。






「聞いてねぇぞ…俺」




「そのうち鳥がくるだろ」



「……」



ヒトゴトすぎる隊長を目の前に今から行く気がしないアスマだった。開け放した窓を見れば、さっそく鳥が。






「はいはい…行きゃいいんだろ…」






腑に落ちないといえば腑に落ちない。全員が中忍の小隊でBランクならまず間違いなく完了できるだろうに。





「…何で俺かな…」





アスマが盛大に溜め息をついていると、シカマルが2個目の氷を口に含んだ。






「5代目と賭け将棋してさ」



「ぁん?」



「俺、勝ったからお願いした」






何だか職権濫用くせー話だなと思いながらアスマは黙ってきいた。





「アスマ隊に加えてって」





「…だから何で俺なんだよ」





「俺、戦力半分以下だから今」





見てのとおりグダグダだるだるのシカマル。確かに戦力は落ちてるだろうが…中忍にもなって通る言い訳ではない。





「一か月振りの休日の上忍を駆り出すな、馬鹿」









悔しさあまりに抱き着いてやろうとソファに近寄れば素早くシカマルはかわした。









「シャワー」








すたすたと風呂場へ行ってしまった。






「…なんなんだよアイツ…」






打って変わった素早い身のこなしに消えていく後ろ姿を見ていることしかできなかった。

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